木工教室ブログ:2025/5/23
門司に住んで20年、最初の5年ほどは、レトロの香りがプンプンと漂う、栄町アーケード街の区画内に住んでいました。
私は、新しくて整ったキレイな建物ばかりの街よりも、古いものと新しいものが混じりあう街が好きで、そして、海と山が好き。門司港は、まさにその魅力を兼ね備えた場所でした。
住み始めたころ、海と山に挟まれた空間に広がる、新旧が交わる街に惹かれ、夢中で散策しました。
銀行や大企業のなどの旧支社は、アールデコ調の壮麗な建築。朽ちゆく門司中央市場は、店の間口がとても狭く、ウナギのようにくねる通路が続きます。古い民家は山の傾斜に広がり、登る道は細く迷路のよう。そして、芸者さんの控所だった置屋、旧遊郭、古びた料亭。歴史ある和布刈神社、甲宗八幡宮。また、壇ノ浦を望む関門海峡。
なぜ惹かれるのか?
言葉ではうまく説明できませんが、なぜか落ち着くのです。
人の営みの息づかいを感じるからでしょうか。
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門司港がレトロな街になったのは偶然だと思います。かつては神戸・横浜に次ぐ大港で、多くの企業支社が立ち並び、チンチン電車が走る活気ある街でした。しかし、本州と九州を結ぶ鉄道や道路が開通すると、次第に衰退。
そこに大きな資本が投下されなかったためか、「大規模な再開発」や「建て替え」は進まず、都市開発から取り残されたとも言えます。そのため、古いビルや商店、民家などが今も残り、独特の魅力をたたえています。
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さて、今日はIさんの作品のご紹介です。
Iさんは、おじいちゃんの机をリフォームされました。

実はこの写真の天板(甲板:こいうた)は新品ですが、その下の部分はIさんのおじいちゃんの机を再生したもの。
なんと、100年くらい前の机らしいです。
着手前の写真を撮り忘れましたが、かなり傷んでいました。
甲板は歪みと割れで再生が困難。
また本体も、ホゾの各所に隙間ができていて、甲板の角を押すと本体はグラグラ。
引き出しの底板は割れ、また歪んでスムーズに出し入れできない状態でした。

さて、どこまで再生するか?
甲板は使える状況では無く、新品に交換することに決定。
では、その下の本体は?
部品をすべてばらし、カンナで削りだして新しい木肌にするか?
それとも、おじいちゃんの使った形跡を残して修復するか?
それは、多少の歪みや傷はそのまま残し、最小限の修理を意味します。
結果、おじいちゃんの形跡を残す、後者となりました。

引出しの底板は全て新品に交換しました。

写真ではわかりづらいのですが、引出しの矢印の所に木を貼っています。
厚さ4mm程度の板を貼ってその後カンナで削りだしています。
長年の使用で、木がすり減ってしまっていたようで、かなり使い込まれていたのがわかります。

また、割れ補修のため、引出しの角に木を貼っています。

矢印は、引出しの振れ止めですが、この部品も交換しています。
撮影のタイミングで、一部しかご紹介できていませんが、
実は、ホゾが緩くガタついていたため、多くの部分をバラシて、ホゾを補修し再接着されています。
そして最後は、オイルステインで塗りつぶさない程度に着色し、その後、オイルフィニッシュされました。

Iさん、カンナ仕上げ中。

チェリーの木肌が美しい!
私はこの机に門司港と同じ魅力を感じます。
すべてがピカピカの「まっさら」ではなく、またスタイリッシュとも言えない。
それでも、大好きです。
門司港と同じ香りがする気がします。
<北九州市、男性>