うづくり仕上げの円テーブル、トリマーによる円加工

試行錯誤の!折り畳み式「円テーブル」

木工教室ブログ:2023/12/5

今日は、Mさんの、円テーブルのご紹介です。

円テーブル


さて、どうゆう風に使われるのでしょう?

それで、

実際に、ご自宅に設置されたところの写真を頂きました。

ありがとうございます。


円テーブル


実は、キッチンカウンターの横に設置されます。

大きなリビングテーブルは、別にあるとのことで、


「ちょいご飯」といいますか、

朝食など軽めのお食事にご使用されるとのことです。



そして、テーブルを使わない時は、下の様に収納されます。


円テーブルの収納

便利です。



ちなみに、写真の中の奥の椅子は「アントチェア」と言われる名作椅子。

ご自宅で眠っていた椅子で、1年ほど前、教室で修理をしたものをご利用されています。

手前の四角い椅子は、「ウルムスツール」と言われる、これまた名作椅子で、

教室でリプロダクトされました。




試作


実はこの作品、の完成に至るまで、大変だったと存じます。

生みの苦しみでしょうか。

もがきながら、

楽しみながら♪


ミニチュア、円テーブルの試作

最初はミニチュア作り。

右が1号機。そして、左が2号機


「天板をどうやって折り畳む?」

そして、カウンターに「どうやって取り付ける?」

などは、図面だけでは、わかりづらい。

でもって、ミニチュアを作られました。

その後、図面を完成させて、設計完了。


あとは、材料入手。

最終的に、築上町にある「メタセの杜」で

ヒノキを入手されました。

「メタセの杜」

地元の木がたくさん有って、楽しいところです。



矧ぎ(はぎ)合わせ

矧ぎ合わせ

ご入手された板材は幅が約200mm、

幅広の天板にするため、板同士を接いで

いわゆる「矧ぎ」をご自身でされました。



円の加工

テーブル天板のトリマーによる円加工

矧ぎ合わせが終われば、カンナである程度仕上げたのち、

上写真の円の加工。


円の加工方法はいろいろあるのですが、

上の方法は、割と簡単。



トリマーを円形に動かして、作ります。

中央部は下写真のようにネジがあり、その頭を手で軽く押さえています。

ネジが材料に傷付けないよう、材料側には捨て木を両面テープで貼り

そこにネジを刺して、その上を軽く手で押さえています。


最低限のJIGで、シンプル、かつ、原始的。

ですが、大丈夫。


天板のトリマーによる円加工、中心部

刃を少しずつ出して数回に分けて削るのですが、

板厚が30mmあり、トリマーの刃が下まで届きません。

それで、今度は、材料をひっくり返して、下のビットを使って加工します。


トリマーの倣いビット


トリマーの倣いビット


判りますでしょうか。

コロの部分が、既に加工が終わっているキレイな所に当たって、

そこをガイドに残りの部分を削っています。




うずくり仕上げ

うづくり仕上げ

天板の仕上げは、「うづくり仕上げ」と言って、

日本の旧来からある技法です。

上写真は、Mさんがいろいろ試されているとこです。



下写真は、以前、受講生の方が桐ダンスを再生されたときに、

表面を仕上げられている画像ですが、

うづくり仕上げ

本来、上のような道具(イネのような植物を束ねて紐でぐるぐる巻きにしたもの)で、木の柔らかい部分を凹ませ、硬い部分浮き立たせるのですが、

今回、桐と違ってヒノキのような硬めの木は、

上の方法では、なかなか凹凸が出ませんでした。

それで、機械なども使ってアレコレ試験をされています、



うづくり仕上げ



この「うづくり加工」は、ちょっとした削り込み加減で、

木の表情から感じるニュアンスがガラリと変わったり、



追求すればすればするほど、

堂々巡りしたり、出口が見えなかったり、

ドツボにはまります

Mさんご自宅でもいろいろ試行錯誤。

浮造り仕上げ

最終的には、このように仕上げられました。

イイ感じです。



今回のMさんの作品、結構時間がかかっています。

いろいろな試行錯誤、材料や道具の調達、

また、いろいろな手加工の木工作業。

「思い」があるから「こだわり」が出てきて…。

大事なところはじっくり時間を使って…。

オリジナルの醍醐味ですね。



個人工房では、このような、設計に時間がかかったり、

うづくり仕上げなど、一般的でない加工を含む作品の「注文」をお受けする場合、

手間が多く、その割にそれをそのまま価格へと転嫁できないため、

敬遠されがちです。




先週私は、おせち用の重箱のなかの「仕切り板」をお客様へ納品しました。

実は、「行き場を失ったご注文」でした。

細かな木の加工と、食品に適合する防水塗装など。

価格そのものが安く、また、手間すべてをそのまま価格へ転嫁できない。




Mさん、大変お疲れさまでした。

ただ、納得するものを求めて…。

素敵ですね。




<北九州市、男性>





◆木の家具工房「メープルモデューロ」
Tel:093-342-9165