木のテレビ台

美品!逸品!労作のTV台

木工教室ブログ:2022/1/13


美しいですね。そして、

凛(りん)とした立ち姿。

昨年12月完成の、Kさんのテレビ台です。

TV台


ちょっと上から見ると

TV台

時と共に色濃くなるブラックチェリーが、既に少し色濃くなっています。

たしか、前年のコロナ前からの着手でしたので、結構、期間が経っています。

設計から制作まで、かなり労力が必要な作品です。



上写真でもわかりますように、天・地・左右の板の接合部に接ぎ目が見えません。

中に接ぎ手が入っています。


TV台の取っ手

本体内側の周囲には、約45度に傾斜した飾り面を入れて、

丸い脚はカンナで削って丸く、取っ手は手作り。


テレビ台の引き出しの包みアリ組み接ぎ

また、引き出しの前と側との接合には、強度が大きい包みアリ組み接ぎを使われています。



この作品を作るのは、結構な技術と手間が必要です。



家具工房で作る、無垢材(合板ではない)の一般的なテレビ台よりも、更に手間のかかる作品です。

この大きさの箱型の一般的なもので、30万円前後でしょうか。

それが、このような手間が増えると、…円。


ところが、家具工房の場合、このような製品はあまりみません。

たぶん、手間がかかりすぎて高価になる、また、価格を安くすると収支があわずビジネスにはなりにくい。


ある意味、このような逸品は作れるのは、アマチュアの方の特権だなとも思います。



テレビ台


Kさん、既にたくさんの作品を作られていますが、

いつも、感心します。

多少のミスは気にせず、楽しみながら前へ前へ。

いつも、チャレンジされています。

たぶん、ご本人は、そんな意識は無く…。



Kさんに限らず、

「こういう感じにしたい、ああしたい」

私は、そんな「思い」を持っている方が好きです。



Kさん、完成まで大変だったと存じます。

でも、素敵な作品ができて良かったです (^^



TVボード


(北九州市、女性)







ご興味の方へ

アマチュア木工の特権?


先ほど、テレビ台、30万円前後とお書きしましたが、

一般の方にお見積りをお見せすると、おおよそ、「え~っ、30万もするの」とおっしゃいます。

普段、目にする価格帯と比較してズイブン高く、当然のことだと思います。



教室に来られている方は、お分かりだと思うのですが、

「無垢の家具を伝統的技法で作るのは、思っている以上に手間がかかる」

ホゾ組み終わって、仮組みが終わって、カンナ仕上げからサンディング。

木はガラスや金属のように均一ではありませんので、各工程で木と相談しながら、…。

合板を使用するとズイブン事情は変わってくるのですが、

無垢材だと、技術だけでなく結構な手間がかかります。



先ほど、30万?高い!とお書きしましたが、

ちなみに、おひとり経営で、無垢材のオーダー家具のTV台を30万円で作る方の年収は?といいますと、

実は、多くの方が、日本の平均年収には届きません。

いくら製作に卓越した方でも、また、注文が絶えない人でもです。



家具価格の内訳は、材料費の割合が、私の場合でおおざっぱに、

椅子で10%付近、キャビネットなどの箱もので25~35%くらいでしょうか。

そして、材料費よりも製作人件費がはるかに大きいので、早く作れば作るほど収益は多いということにはなりますが、

いくら工夫をしても、やはり限界があります。

だから、30万円が高いかといわれると、そうでも無いのです。



とはいうものの、価格は、「欲しい人」と「売りたい人」との折り合い点でしか決まりませんから、

売りたい人が35万円といっても、ほしい人が「いらん」といえば売買は成立しません。

だから、作る側は、製作の手間のかかる部分を減らして、少しでも製作時間を減らそうとします。

そのような背景から、時間のかかることは避けようとします。

おのずと、新しいことへのチャレンジなども減ってきます。



すいません、前置き、長くなりました。



アマチュアの方の特権、それは、「いくら手間をかけてもいい!」

収益を気にする必要がありませんから、

そして、

手間がかかる「オリジナリティーのあるもの、こだわりのあるもの、にチャレンジできる」

ということであり、

あまり「世の中に見ないものが作ることができる!」

ことだと思います。

いろいろな可能性を秘めています。



木工は、

木に香りの中で、日々を忘れて没頭できる喜び。

作品が完成する喜び。

いろいろな楽しみ方がありますが、

これも、一つの楽しみ方ですね。




利益をかえりみず(補足)


先ほど、本職の方で、手間のかかることは出来るだけ減らそうとする。

とお書き致しましたが、必ずしもそうでない方もいらっしゃいます。


本来、家具として十分機能するけど、デザインを良くしてあげたいために、

お見積りには入っていないけど、ひと手間ふた手間加えたり、

外からは見えないところでも、細かな配慮を加えたり、…。


家具以外の方、木工以外の方にもいらっしゃいます。


それは、自分が選んだ道が、単なるビジネスだけではなく…。






◆木の家具工房「メープルモデューロ」
Tel:093-341-0838