美しいですね。そして、
凛(りん)とした立ち姿。
昨年12月完成の、Kさんのテレビ台です。
ちょっと上から見ると
時と共に色濃くなるブラックチェリーが、既に少し色濃くなっています。
たしか、前年のコロナ前からの着手でしたので、結構、期間が経っています。
設計から制作まで、かなり労力が必要な作品です。
上写真でもわかりますように、天・地・左右の板の接合部に接ぎ目が見えません。
中に接ぎ手が入っています。
本体内側の周囲には、約45度に傾斜した飾り面を入れて、
丸い脚はカンナで削って丸く、取っ手は手作り。
また、引き出しの前と側との接合には、強度が大きい包みアリ組み接ぎを使われています。
この作品を作るのは、結構な技術と手間が必要です。
家具工房で作る、無垢材(合板ではない)の一般的なテレビ台よりも、更に手間のかかる作品です。
この大きさの箱型の一般的なもので、30万円前後でしょうか。
それが、このような手間が増えると、…円。
ところが、家具工房の場合、このような製品はあまりみません。
たぶん、手間がかかりすぎて高価になる、また、価格を安くすると収支があわずビジネスにはなりにくい。
ある意味、このような逸品は作れるのは、アマチュアの方の特権だなとも思います。
Kさん、既にたくさんの作品を作られていますが、
いつも、感心します。
多少のミスは気にせず、楽しみながら前へ前へ。
いつも、チャレンジされています。
たぶん、ご本人は、そんな意識は無く…。
Kさんに限らず、
「こういう感じにしたい、ああしたい」
私は、そんな「思い」を持っている方が好きです。
Kさん、完成まで大変だったと存じます。
でも、素敵な作品ができて良かったです (^^
(北九州市、女性)
ご興味の方へ
アマチュア木工の特権?
先ほど、テレビ台、30万円前後とお書きしましたが、
一般の方にお見積りをお見せすると、おおよそ、「え~っ、30万もするの」とおっしゃいます。
普段、目にする価格帯と比較してズイブン高く、当然のことだと思います。
教室に来られている方は、お分かりだと思うのですが、
「無垢の家具を伝統的技法で作るのは、思っている以上に手間がかかる」
ホゾ組み終わって、仮組みが終わって、カンナ仕上げからサンディング。
木はガラスや金属のように均一ではありませんので、各工程で木と相談しながら、…。
合板を使用するとズイブン事情は変わってくるのですが、
無垢材だと、技術だけでなく結構な手間がかかります。
先ほど、30万?高い!とお書きしましたが、
ちなみに、おひとり経営で、無垢材のオーダー家具のTV台を30万円で作る方の年収は?といいますと、
実は、多くの方が、日本の平均年収には届きません。
いくら製作に卓越した方でも、また、注文が絶えない人でもです。
家具価格の内訳は、材料費の割合が、私の場合でおおざっぱに、
椅子で10%付近、キャビネットなどの箱もので25~35%くらいでしょうか。
そして、材料費よりも製作人件費がはるかに大きいので、早く作れば作るほど収益は多いということにはなりますが、
いくら工夫をしても、やはり限界があります。
だから、30万円が高いかといわれると、そうでも無いのです。
とはいうものの、価格は、「欲しい人」と「売りたい人」との折り合い点でしか決まりませんから、
売りたい人が35万円といっても、ほしい人が「いらん」といえば売買は成立しません。
だから、作る側は、製作の手間のかかる部分を減らして、少しでも製作時間を減らそうとします。
そのような背景から、時間のかかることは避けようとします。
おのずと、新しいことへのチャレンジなども減ってきます。
すいません、前置き、長くなりました。
アマチュアの方の特権、それは、「いくら手間をかけてもいい!」
収益を気にする必要がありませんから、
そして、
手間がかかる「オリジナリティーのあるもの、こだわりのあるもの、にチャレンジできる」
ということであり、
あまり「世の中に見ないものが作ることができる!」
ことだと思います。
いろいろな可能性を秘めています。
木工は、
木に香りの中で、日々を忘れて没頭できる喜び。
作品が完成する喜び。
いろいろな楽しみ方がありますが、
これも、一つの楽しみ方ですね。
利益をかえりみず(補足)
先ほど、本職の方で、手間のかかることは出来るだけ減らそうとする。
とお書き致しましたが、必ずしもそうでない方もいらっしゃいます。
本来、家具として十分機能するけど、デザインを良くしてあげたいために、
お見積りには入っていないけど、ひと手間ふた手間加えたり、
外からは見えないところでも、細かな配慮を加えたり、…。
家具以外の方、木工以外の方にもいらっしゃいます。
それは、自分が選んだ道が、単なるビジネスだけではなく…。