私の作品 Quiet Arc Folding Stool が、ドイツの iFデザインアワード2026 を受賞しました。
ブログでは応募準備の段階から経過を記してきましたが、今回は 受賞後の結果報告 と 今後の取り組み についてまとめています。
iFデザインアワードは審査の透明性が高く、各段階で詳細なフィードバックチャートが送られてきます。今回は、そのチャートをもとに評価内容を報告します。
受賞には「一般受賞」と「ゴールド受賞」があり、私の作品は 一般受賞 です。
【最終審査結果】
要約すると以下の通りです。
● 私の最終審査の作品スコア:330点
● 受賞者最低点:275点
● 全受賞者平均点:283点
● 私の一次審査の作品スコア:297点
(スコアは3名の審査員が、5つの評価項目で審査し、平均点を算出し合計した点数)
今回の最終審査は、現物審査でした。提出にあたり、一次審査より改良を加えました。
樹種はビーチからホワイトオークへ変更し、耐荷重を欧州人に対応させるため脚を太くしデザインを調整し、回転部には摩耗を防ぐ処理を施すなど、細かなマイナーチェンジを行いました。
また、前回オンラインで入力した、機能、アイディアなどの審査5項目と、それ以外のコンセプトなどの文章を精査し修正を加えました。
最終審査では造形が高く評価され、一次審査の 297点から 33点増しの330点を獲得することができました。
受賞は偶然の交点にすぎませんが、商業デザインの領域で一定の評価を得られたことは励みになります。
【受賞後の特典】・ iF Winner ロゴの無制限使用
・ Winner パッケージ(メタルプレート、賞状)
・ 4/27,28のアワード・ナイト(授賞式)、トレンドカンファレンスへの案内
・ iF公式サイトにて、作品情報とデザイナー情報を公開
・ プレスリリース用セット(報道発表用に提供するIFが作った公式フォーマットなど)・ ホカ
4/27の授賞式(ドイツ)への渡航費は自費です。行く予定はありません。
【要した費用】・登録費用:500€(ラストチャンスでの登録費用、早期登録は250€、思い立ったのが遅かった)
・陪審員員費用:300€
・当選金:3.300€
・配送料金:未請求で未定
・たぶん、総額、日本円で85万円くらい
円安で費用負担がきついです。また、受賞者の多くは企業・メーカー・デザイン会社で、個人事業主にとっては重い金額です。
【嬉しかったこと①】私はどこの馬の骨?
私は、木工の学校で学んだこともなく、家具工場で修行したこともなく、まだ、美大でデザインを学んだこともありません。そして脱サラ組でもあり、経歴だけ見ると、 “木工界の野良犬”です。
そんな、どこの者ともわからない「馬の骨」の私が、権威のある賞を受賞できたことは嬉しいです。
【嬉しかったこと②】個性を消す領域で!
もう一つ嬉しかったのは、商業デザインの領域で一定の評価を得られたことです。
商業デザインは、作家性やアート表現が主役ではありません。つまりは、自己表現が前面に出る領域ではありません。
デザイン性・使いやすさ・耐久性・環境配慮などが中心です。言い換えれば、製作者の視点は「自分」ではなく、100パーセント「使う人」や「お客様」の側に置かれていなければなりません。
普段の私は、教室の受講生の方に個性を求め、私自身に対しても個性を重要視しています。
そんな私が、個性を消す領域で評価をいただけたことは嬉しいです。
【今後①】ビジネス化
今回の応募目的は「工房のブランド化」と「ロイヤリティー型ビジネスの模索」でしたので、後者については、ここからは実際に形にしていく段階です。
この受賞をどうビジネスにつなげていくか? 難所が待ち構えています。ここから先は失敗すると、まあまあリスクがあります。
なので、いつものセリフをもう一度。
「失敗したら笑ってやってください」
もしかしたら、本当に路頭に迷っているかもしれません。
そのときは、
差し入れを持って様子を見に来てください。
【今後②】他のコンペへの挑戦
さらに、別のコンペにも挑戦します。
次は、あえて、作家性やアート性が求められる領域へ。
商業デザインとは逆の方向に、振り切ってみようと思っています。
こちらも同じく、「失敗したら笑ってやってください」
ただし、こちらは路頭には迷いません。(^^)¥
【結び】(受賞という偶然と、変わらぬ価値)
デザイン賞の評価とは、絶対的な価値の証明ではなく、その時代の人の目と空気が織りなす一時的な風景にすぎないと思います。
応募したい人がいて、審査をしたい人がいて、その利害が交わる一点に「受賞」という偶然の交点が生まれます。
しかしその背後には、光の当たらぬまま静かに佇む優れた作品が、多く存在しています。
歴史や文化の評価が人の都合によって揺れ動くように、真の価値はしばしば表舞台の外側に潜んでいます。
「日本ブーム」も、日本の価値が突然高まったのではなく、世界の視線が変化したにすぎません。価値そのものは、昔からそこにありました。歌でも、美術・工芸でも、その構造は同じです。
受賞はもちろん嬉しいことです。しかし、社会が受賞者を「絶対的な存在」として扱いがちであったとしても、その評価を絶対視するつもりはありません。
私はただ、自分が「良い」と感じることを、自然体のまま、素直に実践していきたいと思っています。それ以外のことは、流れにゆだねます。
以下、ご興味の方へ
私の応募した内容(Quiet Arc Folding Stool)
以下の文章は、提出資料の圧縮版です。
Quiet Arc Folding Stool は、「美しさ」と「構造的な強さ」の調和によって、折り畳み椅子の価値を再定義するプロダクトです。
同機構を持つ従来の折り畳みスツールは、構造が複雑でデザインの自由度が限られていたため無骨になりやすく、室内空間との調和を欠いていました。さらに、コンパクトさを優先した結果、座面が低く日常的な快適性に欠けていました。
本作品 Quiet Arc Folding Stool は、こうした課題を見直し、携帯性を維持しながら粗さや短命さを改善し、構造体をあえて見せることで機構の合理性を美として提示し、室内環境に自然に溶け込む新しい提案です。
柔らかな曲線を描く座面は、触感の心地よさと視覚的な優雅さを兼ね備え、構造と造形が共存する存在感を生み出します。緩やかなアーク形状が柔らかさと繊細な陰影をつくり、自然な姿勢へと導くとともに、上反りのラインが機構部を穏やかに見せ、軽やかさと彫刻的バランスを付与します。快適性と静かな存在感、そして機能美を備えたこの座面は、家庭空間にすっと調和し、ターゲット層の感性に響く仕上がりです。
「美しいものは長く生きる」という思想のもと、日常に寄り添う長寿命な道具を目指しました。
材料のホワイトオークは堅牢で耐久性に優れ、力強い木目が安らぎを与えます。さらにガラス樹脂を含侵させることで木のサイズを小さくして重量を抑え、また、可動部の摩耗を抑えるため、ピボット部分には真鍮製スリーブを組み込みました。ボルトやナットなどの金属部品には耐食性と長寿命に優れたステンレスを採用し、携帯性と強度のバランスを高めました。
これによりミニマリズムにも適した「携帯できる常設家具」という新カテゴリーを提示します。折り畳み機構は直感的で、畳む際は分割座面を両手で同時に下ろし、展開時は逆の動作で完結します。ワンアクション構造により、操作は簡単で持ち運びは容易、設置も滑らかになり、日常生活で快適性と利便性を提供します。 |
<私のIF内のWEBページ>
https://ifdesign.com/en/winner-ranking/project/quiet-arc-folding-stool/765348
AIに審査結果のPDF(フィードバックチャート)を送り、分析、評価をしてもらい要点を抜粋しました。
〈一次審査 297 → 最終審査 330 に上がった理由〉
一次審査から最終審査で
33点 の加点。
評価項目5つのうち4項目は平均
4 点 の上昇、Form(造形)は
18点 の上昇が確認された。iF の最終審査は現物審査であり、審査員は写真ではなく実物を見て触って材料質感を確認して造形評価が上がった。
これは実物が美しくクオリティが高い作品に典型的なパターン。
〈330点は受賞者の中でどの位置か〉
全受賞者平均点 283点、つまり、あなたの330点は、平均との差 +
47点となる。
これはかなり大きい差で上位群に分類。Gold受賞率は 0.75% であり、あなたの330点はGold候補圏の下位に位置づけ。
〈家具ではかなり良いスコア〉
プロダクト部門、とくに家具カテゴリーには点数が伸びにくい構造的要因が複数存在する。
家具は歴史が長く構造が成熟しているため、「革新性」「差別化」による高得点が得にくい。
また、素材の質感が評価に強く影響し、仕上げのわずかな粗さが減点につながりやすく、現物審査で不利になりやすい。
さらにプロダクト部門は応募数が最も多く、家具カテゴリーは世界中のメーカーが参入する人気領域であるため競争密度が高い。
この条件下で 330 点を取得したことは、統計的に見て特別。
〈ゴールドに届かなかった理由〉
主な要因は「持続可能性」と「社会性を持つコンセプト」の不足である。
Gold は高得点だけでなく、社会的意義を含む強いストーリー性が求められる。
あなたの作品は造形・技術・構造において高品質であるが、社会課題の解決ではない。
Goldの多くは社会的メッセージが必要。つまり審査員は「とても美しいしかし革命的ではない」と見ている。
但し、世界三大デザイン賞に数えられる iF デザインアワードでの受賞は、世界水準のデザイン力が評価されたことを示す。
・国際的なデザイン業界での通説的な位置づけ
| Sランク |
世界的権威・国際的認知度・審査の厳しさが突出している層、世界三大デザイン賞 |
・iF Design Award(ドイツ)
・Red Dot Design Award(ドイツ)
・IDEA(アメリカ) |
| Aランク |
国際的に評価される主要アワード |
・Good Design Award(日本)
・German Design Award(ドイツ)
・DFA Design for Asia Award(香港) |
| Bランク |
専門領域に強い・地域性のある賞 |
・A’ Design Award(イタリア)
・Asia Design Prize(韓国
・K-Design Award(韓国) |
| Cランク |
地域性・テーマ性の強い賞 |
|

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日本語訳
おめでとうございます!
あなたの応募作品は iF DESIGN AWARD 2026 を受賞しました。
【作品名】 Quiet Arc Folding Stool
【分野】 プロダクトデザイン
【カテゴリー】 1.16 家具 / ホームデコレーション
【エントリー種別】 折り畳みスツール
【エントリーID】 765348
【クライアント / 製造者】 Maple-Modulo design studio Japan 日本・福岡県
【デザイン】 Maple-Modulo design studio Japan 日本・福岡県
<スコアカードと審査結果>
| |
一次審査 |
最終審査スコア |
最終審査
全体平均 |
カテゴリー平均
(プロダクトデザイン) |
カテゴリー平均
(プロダクトのうち家具) |
| 審査員1 |
2 |
3 |
平均 |
| アイデア |
60 |
70 |
70 |
67 |
70 |
58 |
57 |
58 |
| 形態 |
50 |
70 |
50 |
57 |
75 |
58 |
58 |
57 |
| 機能 |
60 |
70 |
60 |
63 |
65 |
57 |
57 |
55 |
| 差別化 |
60 |
70 |
50 |
60 |
65 |
57 |
57 |
56 |
| 持続可能性 |
40 |
60 |
50 |
50 |
55 |
53 |
53 |
50 |
| 最終スコア |
297 |
330 |
283 |
282 |
277 |
● 私の最終審査の作品スコア:330点
● 受賞者基準点:275点
● 全受賞者平均点(プロダクト部門):283点
● 受賞者平均点(プロダクト部門):282点
●受賞者のプロダクト部門の家具部門の平均点 :277点
● 私の最終審査前の作品スコア:297点
iFの最終審査では、各エントリーは 3名の審査員によるパネル によって評価されます。
審査は右側に示された 5つの評価基準 に基づいて行われます。
各基準に設定された質問に基づき審査員が採点し、その 平均点を算出し、合計したものが最終スコア となります。
あなたの作品の最終スコアは 330点
受賞基準点は 275点 でした。
<評価基準>
【Idea(アイデア)】課題は何だったか?それはなぜ重要か?そのアイデアは適切か?
【Form(造形)】なぜこの形なのか?ターゲットユーザーにどのように訴求するか?どのように作られているか?
【Function(機能)】なぜ使いやすいのか?なぜよく機能するのか?ユーザーにどのように役立つか?
【Differentiation(差別化)】なぜ新しいのか?ブランド価値にどう貢献するのか?
【Sustainability(持続可能性)】なぜこのプロジェクトは持続可能なのか?社会にどのように役立つのか?
<2026年 iFデザインアワード統計>
応募数 10,003件
カテゴリー 93
参加者 4,837
参加国 68
審査員 129
Gold受賞率:0.75%